散骨業者になるにはどうしたらよいか?
散骨業者に資格は必要か?
結論から言いますと、散骨業を営むための直接的な国家資格はありません。
現在、様々な散骨に関する協会が設立され(作りすぎのような気もします)、独自のガイドラインを示して資格の提供を行っていますが、これらは国家資格ではなく民間資格ですので取得する義務はありません。
実績が無いとどうしても「箔付け」のために何か資格を取得してアピールしたがる傾向にありますが、お客様の目線で見た時にその資格が決定打になって申し込むということもほとんど無いと思います。
ただし、2021年3月に厚生労働省が散骨事業者向けのガイドラインを発表しました。ガイドラインですので法的拘束力はありませんが、ある程度この内容に従う必要があります。
某協会の発行したガイドラインを拝見させて頂きましたが、教本は散骨のルールやマナー、散骨に関する法律知識など、大変充実した内容なので、お時間と経済的余裕のある方は受講して資格を取得するのも基礎知識の習得という意味では悪くはないと思います。
注意すべき点は「協会」なので、入会すると様々なルールや規則に縛られることになり自由度は減ります。特に価格設定は制限され、紹介制度は大きな会社ほど優位な状態になります。また、散骨実績を報告する義務が生じますので営業状態などが全て筒抜けになり競争はできなくなります。
乗船散骨は国家資格が必要です
海洋散骨を行うにあたって船舶を使用する場合は船舶免許の取得が必要になります。ご自身が取得しても良いですし、船を操縦される方が保有している場合でも良いでしょう。
船舶免許は国家資格で、正式名称を小型船舶操縦士免許と言います。一級、二級とあり、二級は平水区域および海岸より5海里(約9キロメートル)以内での航行となります。
海洋散骨の場合、それほど沖合には出ませんので湾内や沿岸地域だけの航行であれば二級船舶で充分かと思います。
定員12名以上は特定操縦免許も必要です
令和4年に発生した知床遊覧船転覆事件を経て、令和6年4月1日に特定操縦免許制度も改正されました。
プレジャーボートであっても定員12名以上は旅客船になりますので特定操縦免許(講義4時間、実技4時間計8時間の講習)の資格が必要になります。
→令和6年4月1日以降の特定操縦免許制度について(国交省ページ)
内航不定期航路事業の届け出
定員12名以下でもお客様を乗せて散骨する場合は内航不定期航路事業の届け出が必要になります。これは有償・無償を問いません。事業開始の30日前までに営業所を管轄する地方運輸局長へ届け出します。
なお、出港ついでに釣りなども行う場合は遊漁船の登録を済ませておく必要があります。
散骨業者になる為の注意点
散骨業者には主に「仲介」と「直受け」の2通りがあります
仲介とは散骨を直受けしている業者さんにお客様を紹介して仲介マージンを貰う方法です。いわゆるマッチングサイト運営です。
散骨業者として集客している会社の中には、船舶の手配だけを仲介している会社が存在していますが、旅行業の資格を保有していない場合、仲介方法によってはこれらの行為は違法になります。なお、旅行業の有資格者の名義を借りていた場合も違法になります。
散骨業界ではこの事実を知らないで行っている業者の方も多く要注意です。詳しくは旅行業法(外部)ページをご確認ください。
直受けとは自身でボートを手配し、お客様と直接やりとりを行う方法です。集客からアテンド、集金まで全て自分で行うので利益は大きいですが、その分集客力が必要になります。
散骨業を始める方の多くは小さな船でこの直受けから始める方がとても多いのですが、定員12名以下でも人を運ぶ場合は内向不定期航路事業の届け出が必要になりますので忘れないように注意しましょう。
個人と法人どちらが良いか?
散骨は「遺骨」という大切なものを取り扱いますので個人事業よりは法人の方が信用性が高く好ましいです。
散骨を依頼されるお客様の年齢層は60代以上と高いので、「合同会社は小さい会社、株式会社は大きい会社」という発想が根強く残っているので、合同会社よりも株式会社であった方がより信用度が増すでしょう。
お客様もしっかり見て依頼してきます。信用面では圧倒的に法人が有利です。
レンタルボートで散骨は注意
散骨業者の中にはレンタルボートで散骨してるところもあるようですが、借りる際にきちんと「散骨するため」と承諾を得てから借りないとトラブルに発展しますので要注意です。
ヤマハのSeaStyleなどのレンタルボートを借りて散骨代行などを行ってる方がいるみたいですが、SeaStyleの利用規約などでは個人・法人問わず商業利用は禁止されています(HPに記載はありませんが電話で確認済み2019/03/03)。マリーナでその行為が発見された場合は会員資格を失うだけでなく、依頼されているお客様にも迷惑がかかりますので絶対に行わないようお願いいたします。
粉骨はどうするか?
散骨において粉骨(遺骨を2mm以下の粉末状にすること)は必須です。
ご自身で粉骨設備を整えて請け負う方もいらっしゃいますが、最低でも設備投資に100万以上はかかりますし、処理施設との契約、高い専門技術などを習得するのはとても大変です。
粉骨については専門の業者などに委託された方が良いでしょう。
まごころ粉骨®ではこうした散骨業者向けの委託粉骨も請け負っています。最初に「業務委託契約書」を取り交わしておけば、わざわざお客様に粉骨申込書を書いてもらわなくても業者名で申し込むことができるようになります。六価クロム除去にも対応しましたので各種協会のガイドラインにも準拠した粉骨処理が可能です。
集客方法はどうするのか?
現在の集客方法のメインはインターネットです。ホームページを開設してヤフーやGoogleに広告を掲載してもらって集客します。
実際にご覧になってもらうと理解しやすいと思いますが、様々な散骨業者さんが乱立しており広告合戦のようなありさまです。多い会社は毎月100万円単位で広告費を使って集客しているようです。
中には広告費を削ろうとGoogleマップのレビュー操作などを外部委託している会社もあるようですが、2023年10月よりこういったサービスの利用はステルスマーケティングとして厳しく処罰されますのでご注意ください。
もしくは地元の葬儀会社と提携して散骨希望者を紹介してもらうという方法があります。こちらは交渉が大変ですが、順調にいけば安定収益が望めます。
開業して1年以内に廃業する人が多い理由
集客できない
現代はインターネットで集客できなければ敗北ほぼ確定の時代です。「Googleに広告出せばいいや」と思って出稿すると1クリック何百円もしてあっという間に広告費だけで30万も50万もかかってしまい驚かれる方も少なくありません。
散骨系マッチングサイト等に登録してみるもののたまにしか依頼はなく・・・当然ですよね、マッチングサイトの運営者が協会の役員なんですから。そういう世界です。
でもチャンスはあります。SNS使ったりYouTubeで流したりすれば少しは集客はできます。
散骨マガジンの業者登録は登録料も仲介手数料も不要ですので是非活用してください。
天候に左右され過ぎる
海洋散骨ってお天気ビジネスなんです。しかも釣りとかと違ってお客様は年配の方が多いので天気が良い日でないと出港しづらいものがあります。
そうやって考えると散骨に適した日って月に2~3日あるかないかなんです。
この日程にお客様の都合をピッタリ合わせられるか?というとなかなか難しいものがあります。ということで売上が伸び悩みます。
まとめ
以外に小さい市場規模
散骨業者を目指そうと思っている方々は、「不況でも亡くなる人は多いし、お墓は売れないからこれからは散骨の時代だな!」と思ってる方も多いと思います。
実際のところ、地方では先祖の墓に入れたり、都心部では安くなった樹木葬を利用したり、自治体の合葬墓を利用する方の方が多く、市場規模はそれほど大きくないのです。
その割には散骨業者の数が多く、低価格合戦のような状態になっているため、商売としてはほとんど儲からずに撤退してゆく方が多いのが実情です。
結局、既にプレジャーボートを保有しており、年金+20万くらいを稼ぐビジネス。と考えているのが丁度良いのかも知れません。
受託の度にいちいちチャーターしていたら価格競争にも勝てませんし、高い利益率も確保できません。
また、海洋散骨は天候に左右されることも多いので月に2~3回出航できれば良い方だと考え、そんな中で利益を出していこうと思えば1回あたりの利益率を上げる必要があります。
そのうえで準備が整ったら、自社で簡単なホームページを作り、散骨@マガジンなど、無料でも集客力のあるサイトに散骨業者登録をしてお客さんを獲得する・・・こんな流れが最適ではないかなと思います。
かなり正直に書かせていただきましたので参考になれば幸いです。