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散骨関連の法律と条例、散骨って違法なの?

六法全書を読む弁護士

散骨って違法なの?

まだまだ多くの方は「散骨って違法じゃないの?」と思われていると思いますが、法律上では散骨についての法律が定められておらず、過去に法律をもって罰せられた事が無いことはありません。祭祀承継権者が節度をもって行った散骨については散骨は違法ではありません。

裁判長

厚生労働省による散骨ガイドライン

2021年3月30日には厚生労働省の公式HPにて散骨事業者向けに「散骨に関するガイドライン」という文書が掲載され、散骨が文化としてほぼ認められた状況となっています。

また、特許庁においても「散骨」が商標区分として認められましたのでこれも裏付けの一つになると思いますし、粉骨に関しては東京都立小平霊園や多摩霊園においては「樹林葬」当選者に対して「粉骨して持参するように」との正式通達を出してることからも違法性は無いものと判断できるでしょう。

更新:

ただし!遺骨をそのまま撒けば遺棄罪になります
火葬後の遺骨は意外に原型を留めています。粉骨化せずにそのまま撒けば、第三者が発見したときに必ず事件化するでしょう。そうならないよう「節度」という意味でも散骨の際は必ず「粉骨」をしましょう。ちなみに祭祀承継者や遺族が葬送の目的で遺骨を粉状にすることは損壊罪にはあたりません。

散骨に関する許可または提出書類などはありません

散骨には許可や申請などは必要ありません。よって役所への申請書類なども存在しません。

市役所墓地や納骨堂に預けた遺骨を別のお墓に移動する場合には改葬許可証を役所に発行してもらう必要がありますが、散骨の場合は「移転先なし」と同じ扱いなので役所への提出書類は必要なく、お寺に事情を話して遺骨を返還してもらうだけになります(2016年6月27日に役所に確認済み)。

但し、なかには厳格なまでに「改葬許可証が無いと遺骨は渡せない!」というお寺もありますので、その場合は改葬許可申請書の理由欄に「自宅で保管し供養するため」と記入して各自治体の判断になります。

以前は多くの自治体で判断に迷っていたようですが、厚生労働省がガイドラインを明記した為、近年スムースに許可が下りるようになりました。とは言え、ガイドラインの存在すら知らない自治体も多いので、不安な方は厚生労働省の公式ページに掲載されている散骨業者向けのガイドラインを印刷して持参すると理解が早まると思われます。

散骨関連の法律と条例

刑法190条の死体損壊等(死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は3年以下の懲役に処する)とあります。また、墓地・埋葬に関する法律(埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない)というのもあります。

厳密に言えば散骨をするために遺骨を粉末にすることや、野山海洋に撒くことは違法という解釈になりますが、これらの法律は犯罪を抑止するために作られたものであり、祭祀の方法としては該当しないというのが「おとがめ無し」で済んでいる一番の理由なのだと考えられます。

公式な見解ではありませんが、1991年にNPO法人「葬送の自由をすすめる会」が発足し、一回目の自然葬を行った際に、法務省刑事局は「葬送を目的として、個人が節度をもって実施する分には遺棄罪にはならない」という意味の見解を述べたと言われています。

また、厚生労働省は「散骨は墓地埋葬法に抵触するのか?」という質問に対して、散骨は対象としていないので規制の対象にはならないと見解を述べたと言われています。ここであえて「述べたと言われている」と記述したのはいづれも公式見解ではなかったからです。

その6年後、厚生省は1997年2月10日~1998年6月4日の間に全12回に渡り「これからの墓地等の在り方を考える懇談会」を開催し、散骨についても議論されました。この中では前述した葬送の自由をすすめる会からのヒヤリングなども行い、散骨の現状と将来性を踏まえて様々な方面から議論された結果、高温で焼かれる遺骨に関して衛生面での心配はないものの、国民の感情的配慮の面で法的規制をするべきではないのか?という意見も出、これに対し各地域の宗教的な考え方もあるので各自治体の条例などで規制すれば良いのではないか?といった意見もありました。また、今後「散骨」が度を超した商業的な広がりをみせた時には何かしらの規制も必要であるとの厳しい意見も出ました。

条例による規制の動き

その16年後の2014年5月30日、閣議後に行われた記者会見において、当時の田村厚生労働省大臣に対して記者が「熱海で散骨トラブルが発生しているようですが?」と質問したところ、大臣は「法律を確認したうえで自治体からの相談には乗ってゆくつもりだ」とは述べているものの明確な回答は避けましたが、翌年の2015年に熱海自治体により散骨ガイドライン制定されました(詳細は後述)。

厚生労働省により認められる

2021年3月30日には厚生労働省の公式HPにて散骨事業者向けに「散骨に関するガイドライン」という文書が掲載され話題になりました。

このガイドラインは事業者向けではあるものの、散骨が葬祭文化としてほぼ認められた状況となりました。「河川に散骨してはダメですよ」や「散骨証明書を発行しましょうね」といった具体的な指示が含まれており、より一層踏み込んだ内容になっています。

散骨は違法にはならない

散骨を違法としてしまうと「火葬後の遺骨は全て墓地に埋葬すること」など国家が国民に宗教的な制限をかけることと同じになります。

さらに受け入れる自治体による霊園の整備や法律の改正、民間への経済的負担がかかります。これらを考慮した場合、宗教観は各地で異なるので自治体に任せておいた方が良いのではないか?ということなのだと思います。

また、少子化により継承者が途絶え「無縁墓」が増え続けることも問題ですし、宗教絡みは国家としてコントロールできなくなる恐れもあるのであえて避けているのかもしれません。

これらの理由もあって散骨が違法となる恐れはほぼありません。むしろ最近では、増え続ける墓地問題の解決策として散骨が推奨されている諸外国の例などから影響を受け、推奨される可能性も出てきました。

「埋める」ことが許されているのは墓地だけ

近年、私有地を利用した散骨場を提供する方が増えてますが注意が必要です。

日本の法律には「墓地・埋葬に関する法律」というものがあります。主に墓地、納骨堂又は火葬場の管理者向けの法律ですが、この法律の中に明記されているように、埋葬することは都道府県に許可された正式な墓地でのみ可能です。

よって埋める(埋蔵・埋葬の種類を問わず)行為があるものは、その場所が自治体から認可を受けている認可墓地なのか確認する必要があります。

・遺骨を骨壺から取り出して庭に埋めた → 違法です(墓埋法)
・遺骨を骨壺から出して庭に撒いた → 違法です(遺棄罪)
・遺骨を骨壺から取り出して粉末にして庭に撒いた → 違法にはなりません
・遺骨を粉末にして山や海に撒いた → 違法にはなりません
その他 → 散骨ができる場所、できない場所

また、各都道府県によって散骨に関する条例などが異なりますので、必ず事前に調査の上で実施することをお勧めします。

散骨許可に関する条例がある市区町村

散骨禁止エリア

北海道長沼町

2005年3月16日に条例第10号(改正:2013年3月27日条例第15号)として日本国内で初となる散骨禁止条例(長沼町さわやか環境づくり条例)を公布。町内に樹木葬を目的としたサービスができ、これに対して地元住民達より苦情が上がり、議題に提出され条例ができた。第11条の中に「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」という条例が組み込まれ、散布する場所を提供することを業とした者は、6月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処するとある。

北海道七飯町

七飯町内において事業者による法定外の葬法が提起された場合を想定し、2006年3月14日、要綱第1号(七飯町の葬法に関する要綱)として制定。同2006年4月1日に正式な条例として施行された。地域関係者の法的権限が増し、罰則などは制定されていないが散骨業を行おうとするものは事業計画書の提出などを求められ、町の許可が必要となる。事実上これにより散骨を業として同町で営業することはぼぼ不可能になった。

北海道岩見沢市

2008年12月22日、岩見沢市における散骨の適正化に関する条例施行規則として施行。散骨場を設置するにあたって事業計画書の提出や運営者の資格条件の確認、学校や国道、道道から500m以上離れていることなど厳しい内容。事実上、この地域での散骨場の運営は不可能に近い。

長野県諏訪市

墓地、納骨堂、散骨場、火葬場などの建設や設置において、近隣住民からの同意書がないと建設、設置をしてはならないという条例。墓地、納骨堂、散骨場に関しては設置しようとする場所から200m以内、火葬場に関しては500m以内の全ての住民の同意が無いと設置はできないというような条例「諏訪市墓地等の経営の許可等に関する条例」。2000年4月1日から施行。

埼玉県秩父市

[個人も対象につき要注意] 2008年12月18日、「秩父市環境保全条例」の中に盛り込まれた38条にて施行。当初は業者による散骨場設置に対する対策として議論されていたが、規制対象は業者だけではなく「秩父市内で焼骨を散布しようとするすべての人」になったので個人の方も対象に。首都圏で初、全国で4番目の散骨に対する条例。県内有数の観光名所、長瀞での散骨を阻止するためには有効な条例である。

埼玉県本庄市

2010年年4月1日「本庄市散骨場の設置等の適正化に関する条例」として施行。市内の環境保全を目的に、散骨場を設置しようとする者は市長の許可を得る必要が生じる。許可の基準は厳しく、事実上、事業としての散骨は認められていない。個人の散骨に関しては明記なし。

静岡県御殿場市

2009年03月09日条例第19号「御殿場市散骨場の経営の許可等に関する条例」として施行。散骨を行おうとする業者に対して制定された厳しい条例。犯すと6月以下の懲役又は50万円以下の罰金を伴う。神奈川県の業者が御殿場市内に散骨場を設置しようとした際に対抗策として作られたもの。個人の散骨については明記されていない。

静岡県西伊豆町

条例では定められてませんが、2015年4月に当サイトの広告を町役場のホームページに掲載申請したところ、「違法性があるかもしれないので許可できない」という返答と頂きました。

静岡県熱海市

2015年7月1日、熱海市は「無秩序な散骨が行われることによって、風評被害等による熱海市のブランドイメージを毀損するおそれがある」として海洋散骨業者に対して熱海市海洋散骨事業ガイドラインを制定。強制力はないものの、ガイドラインに沿わない業者は熱海市での散骨を大幅に制限されることは間違いない。初島を含む、熱海市の土地から10km以上離れた海上でのみ散骨をするようにと制限をかけた。また、事業者が「熱海」や「初島」などの文言をサービス上に掲載することを禁じた。

静岡県伊東市

2016年2月1日、観光地としてのイメージを守るために海洋散骨業者などに対し、伊東市の陸地から6海里(11.11km)以内での海洋散骨をしないよう伊東市における海洋散骨に係る指針を発表した。また、熱海市同様、散骨業者による広報において「伊東市」や「伊東市沖」などの文言を使用することも明記した。具体的な罰則制定はないものの、実質的に散骨を禁じた内容となっている。

東京都

東京都福祉保健局のサイト上に散骨に関する留意事項というのが掲載されており、この中には国の見解に準ずるということと、都内における散骨については事前に各自治体に確認をとることと言うことが明記されています。

神奈川県湯河原町

平成26年7月31日施行「湯河原町散骨場の経営の許可等に関する条例」- 業者によって散骨場を設けようとする場合の規制条例。近隣住民の同意を得るなどの要件が含まれている。

散骨許可に関する法律や州法がある世界の国々

アメリカ合衆国・ハワイ州

ハワイ州法では散骨に対する規制は特にありません。個人所有の土地であっても所有者の許可があれば散骨は可能です。人気の海洋散骨については連邦水質汚染防止法というのが該当し、海岸より3マイル(約4.82km)以上沖合で撒かないといけないというルールがあります。海岸やプールなどへの散骨は許可されていません。また、原則として海洋散骨をした場合は散骨から30日以内にアメリカ合衆国環境保護庁(EPA:Environmental Protection Agency)に報告する必要があります。ハワイ散骨体験談はこちら

アメリカ合衆国・カリフォルニア州

遺骨は1/8インチ(0.35mm)以下まで粉砕すること。海または霊園の一定区域に限る。

アメリカ合衆国・ネバダ州

霊園の一定区域に限って散骨可。

フランス

火葬率5%以下にも関わらず、公道以外ならどこに散骨しても良いというルールがある。

インドネシア

バリ島などでは火葬後は海に散骨するのが一般的。ガルーダインドネシア航空では真空パックして手荷物で制限重量範囲であれば問題なし。

中国

2018年9月、全国法である殯葬管理条例の改正案を発表し、散骨に対して補助金を出し国民の負担をゼロにする方針を出した。台湾は火葬から散骨まで自体の補助があり無料、上海でも自治体から補助金が出るなど散骨に対してはむしろ推奨されている。

韓国

かつては土葬がメインだったが墓地不足からソウルなどの都市部では既に火葬がメインになっている。2007年に「葬事等に関する法律」が改正され、自治体の責務として散骨や自然葬の推進され、ソウル市には「追憶の森」という散骨専用公園まであり、遺灰は土に還すのが最も自然に優しい葬送スタイルであると推奨されている。2020年には散骨を全体の6割まで押し上げようとしている。

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